PT人生、はや10年、まだ10年

桂 理江子「国試のために勉強するのではなく、将来、PT になったあなたを待っている患者さんのために勉強しなさい」国試の一ヶ月前、先生がおっしゃった言葉です。今でも患者さんと出会うと、「あのときがあるから、このご縁が生まれた」と感じることがあります。

理学療法士になって色々な出会いがありました。

世界の人はどんな生活をしていて、どんなリハビリを必要としているのか、という好奇心を持つようになったのも、協力隊でチュニジアに派遣された職場の先輩の影響でした。

就職して5年目のときに青年海外協力隊に応募し、中国で活動しました。北京オリンピックが開催され、経済成長のまっただ中にいた中国ですが、都市と地方の格差は大きく、日本で「普通」と思っていたリハビリは通じませんでした。無いものばかりが気になってしまい、自分のいる意味が見いだせなくなっていたとき、患者さんが「(リハビリの治療をしてくれて)あなたにも感謝するけど、あなたのご両親に感謝します。あなたをこのように育て、こうして中国に来ることを理解してくれている方だから。こういう交流がもっと増えると嬉しいね。」という言葉をかけてくれました。足りないものではなく、今「ある」ものに感謝する、という姿勢に気づかされ、また家族の存在の大きさも感じた言葉です。

現在は訪問の仕事をしています。病院を退院した後の生活をどのように過ごしているのかという疑問からスタートしましたが、利用者さんの今の生活は何十年も生きてきた集大成としてあるものです。「生活の場」に介入することの難しさと同時に、その人の人生の一部に関われていることにやりがいを感じながら日々車を走らせています。

はやいもので理学療法士になって10年。これからも訪れるであろう出会いに感謝し、いつでもスポンジのように吸収できる柔軟性をもちながら成長していきたいと思っています。